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SKY CAFE

 幾何学大学 ~罪なき手~

 

「じゃんけんぽい、あいこでしょー」

桂樹とカリムとゼンの「じゃんけん大会」は、続いていた。桂樹に勝とうと必死になるが、なかなか勝敗がつかない。それと言うのも、 カリムとゼンの背後には鏡があり、全て桂樹に分かってしまうからであったが・・・。

「ちっくしょう、全然勝てねー」

「何であいこばかりなんだ?」

「♪」

カリムとゼンは、床にぺとりと座り込んでしまった。

「ふわはははは!オレに勝つには百年早いな」

桂樹は、不敵に笑うと、カリムがきっ、と睨みつけてきた。

「まぁまぁ、カリム君、十樹先生がきっと見つけて帰ってきますよ。僕も探しますから」

「ちょっと待て、橘は、この研究室にあるらしい盗聴器を探してもらおうか」

未だ、橘への疑惑が晴れないままの桂樹は、橘が外部で神埼に接触している可能性がある限り、橘を野放しには出来ないのであった。

「じゃあリルは」

「オレが探しに行く。お前らはここで待ってろ・・・橘は、こいつらの面倒を見てやってくれ」

橘の肩を、ポンっと叩くと、手首につけていた盗聴センサーのランプが瞬いた。

「あ?今」

------何か、光ったような。

「二人の持ってる盗聴センサーは同じヤツ?」

「ああ、そうだが?」

「橘の持ってる盗聴センサー、ずっと赤いランプが、ついてるんだけど・・・」

カリムは、桂樹と橘の手首を合わせ、見比べた。

「ほらここ」

「何でだ?」

「本当ですね・・・気がつきませんでした」

桂樹は、自分の身につけていた盗聴センサーを、橘に持たせると、やはり赤いランプが点灯した。

「橘!お前やっぱりスパイだったのか!」

「ええ!何故僕が!?」

「着てる服を全部脱げ!パンツ一枚もだ!」

「えええ!?」

-----そして五分後、すっかり身包みをはがされた橘がいた。

「ひどいですよ。ひどいですよ。何故僕が・・・」

しくしく泣いている橘の手首を見ると、先程と同じように、盗聴センサーが赤く灯っている。桂樹は、橘が脱いだ服にセンサーを翳すが、何の反応もなかった。

「何で?」

これでは、まるで橘自身が盗聴器であるかのようだ。ついでに言うとオレが変態のようだ。 桂樹は、橘に服を渡すと、「考えろ考えろ」と頭をフル回転させた。

         

神埼は、用を済まして自身の生体医学部の研究室に戻り、お茶を飲んでいた。丁度その時、身包みをはがされた橘の声が、盗聴用のイヤホンから聞こえてきて、神埼は思わずむせてしまった。吹いたお茶を、ふきんで拭いている間、神埼は大笑いし、周囲の者は研究室のトップに何があったのかと心配して、その様子を見ていた。

「神埼さん、携帯が鳴ってますよ」

神埼の助手の一人が、デスクの上に置いてあった携帯を手渡した。

「ああ、すまない・・・はい、神埼です」

着信ナンバーは、父だった。私用に違いないと思い、神埼は研究室から出て、廊下にたった。

「何の用ですか?父さん」

「話がある」

「そりゃなければ、電話なんてかけて来ないでしょう」

神埼の父、保は、上層部からの支持を息子に伝えた。

「実はな、今度、上層部の方で軍事用クローンを造って、四季との紛争にそなえようとした動きがあるんだ」

「はぁ」

「それで、この国では、初のクローンを誕生させる為、父さんはその計画を練らなくてはならない立場にたった-----そこで、あの二人の名前があがった」 神埼亨は、あの二人と言う人物について、すぐに察しがついた。

「お前は、聞くところによると、白石兄弟と仲がいいらしいじゃないか」

「・・・・確かに仲はいいですよ」

言葉に語弊があるようだが、神埼にとっては、どうでもいいことだった。父、保は、一通り用件を息子に伝えた。

「軍事用クローンね・・・」

兼ねてから、タブーとされてた人のクローンが解禁になったと言う事か。 白石兄弟が、妹のクローンを造っていることは、明白だ。そこまで噂が広がってながら、上層部から何の手も打たないことを、疑問に思っていたが、------そういうことか。 倫理委員会に突き出しても、果たしてまともな判決が下るかどうか。

神埼の父には、大した実績がないことは、兼ねてより知ってはいたが、上層部の言いなりになっている現状に、満足してはいない神崎だった。

「じゃあ、何ですか。今更、白石兄弟と手を組んで、軍事用クローンの製造でもしろと、

そう、お考えですか?」

「お前には、苦労かけるとは思うが・・・」

「分かりました。僕は僕なりの考えで、何とかさせて貰います-----例の盗聴器は、素晴らしい出来でしたしね」

そう言って、神埼は携帯を切った。

「神埼先生!」

噂をすれば影、と言わんばかりに、その時廊下から走り寄ってきたのは、白石十樹だった。

「白石・・・珍しいな。君のほうから、僕を訪ねてくるのは」

「リルを・・・いや、小さな女の子を知りませんか?」

余程急いで来たのだろう。息を切らせて十樹は言った。

「知らないな」

「嘘をついてませんか?先程、食堂へ行って話を訊いてきました」

「知らないと言ってる-----それより僕は、君が知っていることについて、訊きたいことがある」

「何のことでしょう?あなたに何か訊かれるような心当たりはありませんが」

神埼は思った。お互いに知らぬ存ぜぬを貫いてしまえば、一歩も先へは進めないだろう。

「-----取引をしないか?」

しばしの沈黙の後、口火を切ったのは、神埼の方だった。

「君の造っている亜樹ちゃんのことだが、倫理委員会に訴える用意は出来ているんだが」

「-----何のことですか?私は今、小さな女の子を探しているんです。失礼」

白石十樹は、クローンの製造について、倫理委員会が動かない可能性があることを、未だ知らない。それを利用し、取引材料に出来れば、と神埼は思ったのだが、なかなか、思い通りにはならないな、と神埼は舌打ちをした