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十樹と桂樹は、森にたどりついていた。 木漏れ日の射すベンチの上に、いつも同じ様に寝ている筈のジム・カインの姿は、そこになかった。
「今日はいないみたいだな」
「とーちゃん、ここにいたのか?十樹」
ゼンが、十樹を見上げて言う。
「十樹、オレはジム・カインの家を知ってる。こっちだ」
桂樹の誘導の元、後をついていくと、一軒の家があった。その家を見てゼンが驚く。
「何で、オレの家がここにあるんだよ!?」
「オレの家?」
ゼン曰く、外観が本物のカーティス村にあるゼンの家が、そのままこの特別病棟に建てられているらしい。
「とーちゃん!とーちゃん!」
ゼンは、勢い余って、ジム・カインの家の玄関の扉を開けた。扉の鍵は、かかっておらず、 ゼンの目の前に、ジム・カインは現れた。
「一体、何の騒ぎだぁ?」
「とーちゃん!」
ゼンは、感動の再開に「やっと会えた」と、一言言って、ジムの胸に飛び込んだ。
「な・・・なんだ?どこの子だ?」
「------とーちゃん?」
ジムは、突然飛びついてきたゼンに驚きながら、ゆっくりと引き離した。そして、十樹と桂樹を見た。
「何だ何だ、にーちゃん達は双子だったのか」
「そうです・・・ゼン、すまないが、こういう事なんだ」
「リルと同じって事かよ」
「ああ」
ジム・カインもリルも、十樹達が何を言っているのか分からない様子で、きょとんとしている。
「じゃあ、せめてリルと一緒にとーちゃんもここから出してくれよ」
「それは出来ない。規則なんだ」
十樹は言った。
リルは、恐らく昨日ここに放り込まれたばかりで、メインコンピューターにも登録されていないのだろう。服も実験体の服のままだ。 ゼンも同様だ。けれど、ジム・カインは、患者の服を着て、何年になるのか-----
「ここに来るのは、これで最後になるかも知れない。だからゼン、お父さんを置いて、ここから出よう」
「嫌だ!」
「ゼン・・・もうあまり時間もないんだ。カリムも待ってる」
「嫌だ!オレは、とーちゃんと一緒にここに残る!」
「何言ってんだよ、お前」
桂樹は、ゼンの額を指で弾いた。
「ゼンの記憶がまるでないんだぞ、お前のお母さんと一緒になった記憶も、お前が生まれた記憶も」
「オレがここにいたら、思い出すかも知れないだろ?」
「それは、分からないが・・・」
「だったらオレは、それに賭けてみるよ」
☆
「十樹くーん!桂樹くーん!」
ゼンを、ジム・カインの家に置いて、特別病棟を出ようとした帰り道、瑞穂が慌てて、十樹と桂樹の元へ駆けてきた。
「瑞穂・・・どうしたんだ?」
ぜえぜえ、と息を切らしている瑞穂に、桂樹は聞く。
「ここの人達に聞いたら、こっちに向かったって言うから・・・早く帰らないとマズイ事になるから」
「マズイ事って何だ?}
「夜、七時になると、メインコンピューターが作動して、貴方達、ここの患者として登録されてしまうのよ」
「ああ、そんな話は聞いたことがあるな」
「知ってるのなら、もっと早く服を返して頂戴、もう限界よ・・・あら?その子」
瑞穂は、リルを見て。
「昨夜、神埼が連れて来た子だわ」
「やっぱりな」
「神埼は何と言ってた?」
「しばらく、ここで預かって欲しいって」
------預かってってことは、神埼は、リルを一生ここに入れて置く気は、なかったって事か?
「ありがとう瑞穂、もう私達は、帰る所だから」
「そう・・・良かったわ。婦長をごまかすの、大変なんだから。二人共!忘れないでね、豪華ディナーよ、豪華ディナー♪」
「・・・・・」
豪華ディナーを思い浮かべて、楽しそうに先頭を歩く瑞穂を見て、十樹と桂樹は、それぞれ複雑な心境で帰路についた。
☆
「亨、白石くん達の研究室に監査を入れたが、
クローンの製造をしていた形跡は、なかったぞ」
「そうですか」
携帯の端末を手に、神埼親子が話をしている。
「お前のおかげで随分な恥をかいた。軍事用クローンを製造する計画を、一から見直さないといけない」
「僕が、聞いていた時は、確かにクローンの製造をしていましたが・・・亜樹さんはいませんでしたか?」
「亜樹さんは、クローンではない。大学の記録にも、ちゃんと在籍記録があるのだからな」
「ふぅん」
神埼は、少し考えるような仕草をして、父親に言った。
「多分、もうすぐ全てが明らかになりますよ。軍事用クローンの件も、僕の方で少し考えている事があります。その日を首を長くして待っていて下さい」
「お前が、そう言うのなら・・・」
「では、これで」
神埼は、携帯を切り、にやりと笑った。 全ては、神埼の掌の上にあるかのように。