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「ただいまー」
両親は残業で今日は遅い。その声に応える人はなく、誰もいない家に向かって紗菜はそう言った。学校での煩さが嘘のように、家は静まり帰っている。
紗菜は、陸のことを思い返した。
陸のことは大嫌い。でも、大好き。
「私は陸が好きだよ……」
唯一、出迎えてくれた犬に、そう告白した。犬はきゅうん、と首を傾げた。
☆
このままじゃいけない。
翌日の陸と紗菜の二人は、同時に同じことを考えていた。
「クレープで機嫌が直ったと思ったのに!」
「大嫌いって言った事、早くとりけさなきゃ!」
授業中、二人はそんな事ばかりを考えていた。教卓をとっていた数学教師は、二人からただならぬ気配を感じて、びくびくしながら授業をしていた。紗菜と陸は、ちらりとお互いに相手を見ると、瞬間、眼が合い、どきりと胸が高鳴った。思わず視線を背けてしまう。
窓硝子越しに空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっている。
きっときっと、今日が、陸・紗菜に告白する日なんだ。
☆
掃除の時間、二人は教室から出たゴミを焼却場へ持って行く係りだった為、一緒に廊下を歩いていた。
「紗菜!」
「な、なに?」
(言え! 言うんだオレ)
「オレは紗菜が、す……す……すっぱいものでも食べたいかなあっと思って」
「そ、そんな事ないけど、あの、陸、私、この間大嫌いなんて言ったけど、本当は、だ、……だ……大福が食べたいかなあって」
(違う! 違うでしょ! 私)
「そ、そうか、じゃあ、今日の帰り大福屋に」
☆
その言葉通り、二人は帰り道大福屋によって、公園のベンチに座り大福を食べた。
「おいしーね! 私大好きだよ………………大福」
「オレもすっごい好きだ……………大福」
カーン。ゴングの音が鳴る。二人は「何か」の力に負けた。
---------不毛だ。不毛すぎる。
☆
二人は、公園のブランコに乗り、大福の素晴らしさについて延々と語るという、不毛な会話をしていた。夕暮れの公園は、子供達の声で溢れている。小さなカップルらしき少年と少女が、無邪気に笑いあっている。
「あーちゃん、あーちゃんは僕のお嫁さんになって」
「うん、あーちゃんも、としくんのこと好きだから、お婿さんになってね」
そんな将来の約束を交わしていた。
その姿を見て、陸と紗菜は、幼い頃、公園で遊んでいた事を思い出す。
『パパとママと紗菜と陸で、ずーっと幸せに暮らすの!』
紗菜の無邪気な笑顔が眩しかった。懐かしさで胸が一杯になる。
(あの頃はもっと素直だったなぁ)
「子供はいいよな……言いたい事、簡単に言えて」
「そうだね、あんな風に言えたらいいのにね」
「--------……」
互いの言葉に何かの含みを感じて、二人は無言になって、ふと相手の顔を見つめた。
「あのね……?」
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