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シキが眠ったことを確認すると、カエデは瞼から手を離した。
恐らく、これでシキは転生されることなく、ここに留まることが出来るだろう。
(シキがこの事を知ったら、怒るだろうか?)
シキが知る時には、もうカエデはこの世にはいない。 彼がカエデの寿命を使って留まれていたことを知った時、シキはどう思うのだろう。
カエデに怒りを見せるか、それとも自分自身を責めるか。 どちらか一つだ。
だがシキのことだから、カエデに怒るよりも自分を責めて泣いてしまうかもしれない。
そんな事、カエデはして欲しくなかった。 シキをここに留まらせようとするのは、何よりもカエデなのだ。
(シキに転生されたら困るんだ)
たった一、二度助けただけで恩返しに来た一頭の鹿の霊。ユキを失い、悲しみに明け暮れていた自分が、どれだけ彼の存在に救われていたことか。 シキは知らないだろう。
助けられたのはカエデの方だ。
だから。
どうか泣かないでほしい。
カエデが消えた時、自分のせいだと、責めないでほしい。
夜空に燦然と輝く星々を見上げ、祈りを捧げる。
――願わくば……
「ん……カエデ様。そんなに食べては……」
むにゃむにゃと幸せそうな顔をして、そう呟くシキ。
どうやら先程とは違い、良い夢を見ているらしい。彼の夢の中の自分は、一体、何をしているのか。 それを想像し、カエデは口元に微苦笑を浮かべた。
――願わくば
シキが幸せでいますように
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